中国東北部の大興安嶺からハンガリー平原まで、草原はユーラシア大陸を東西に貫いています。今から2500年以上前には、歴史上最初の遊牧民(スキタイ)が草原地帯に登場しました。
草原地帯の北と南には定住民の世界がありましたが、ユーラシアの人々の歴史や文化において、遊牧民と定住民の交流は大きな意味を持っていました。発表前半では、これらのことを大まかに見てみましょう。(今村栄一)
発表後半では具体的な例として、現在のウズベキスタンで、みずからの部族の叙事詩などを語り伝えているバフシという人たちとその活動を取り上げます。
1991年のソ連解体によって独立したウズベキスタンは、遊牧民と定住民の交流が大変に活発であった地域を国土として多分に含む国家の1つです。
その意味で、ウズベキスタンはテュルク・モンゴル系の旧遊牧民と、ペルシャ系、ならびにテュルク系の定住民の「文化的なコンタクト・ゾーン」とも形容できます。
ウズベキスタンに残るテュルク・モンゴル系の旧遊牧民はいくつもの部族に分かれていますが、今回は、コングラト部族出身のウズベク人とカラカルパク人を例として、それぞれの民族の構成を説明しつつ、バフシの活動について主に映像をとおして紹介します。(和崎聖日)