(社福)国際視覚障害者援護協会(IAVI)は、名前は「国際」と世界大だが、所帯はいたって小さい団体(常勤職員セロ、非常勤職員2人、理事長・理事のボランティアおよび半ボランティア出勤3人)で、金なし、人なし、時間なし、という3ない危機の現状にある。
団体創設者は韓国人で、当時は「心身に障害のある者は留学生になることができない」という欠格条項が堂々と文科省の規定に書かれていた時代であった。どうしても日本で学びたいという希望を抱いていた彼は、千葉に在住している親戚を頼って来日、韓国人留学生ではなく、日本に在住している韓国人学生ということで千葉の盲学校で勉学し卒業、1970年、あはき(三療)の国家資格を取得した。
翌71年、当時、日本に在留していた台湾、香港の視覚障害留学生と親睦団体・国際盲人クラブ(ICB)を創設し、その後、和光大学へ進学、卒論でアジアの視覚障害者の実態調査を実施、日本へ来て勉強のできた吾が身と、就学・就労の機会に恵まれないアジアの視覚障害者の置かれた実態を思うにつけ、アジアをはじめとする発展途上諸国の視覚障害者が置かれている困難な状況を打破すべく、日本へ来て学ぶチャンスが得られるよう、81年、ICB奨学制度を創設、82年からはほぼ毎年、留学生を受け入れてきた。
こうした活動を傍らから確認してきた篤志家が93年に板橋区蓮沼の地に土地と建物を寄付、留学生の滞在・活動の拠点、KF会館(現・舟橋記念会館)がオープンし、名称を国際盲人クラブから国際視覚障害者援護協会に変更、95年には待望の社会福祉法人格を取得した。
その後の2000年には、江崎玲於奈氏を座長とする日本の留学生制度の拡充・整備が進められ、関係者(堀利和参議院議員、竹下義樹日本盲人団体連合会長等)の働きかけもあって、IAVIに初めて国家補助金(ODA予算)が交付されるという画期的な動きがあった。ただ、当初は1000万円だったものが、日本経済の不況もあって年々削減され、2018年度からは「国益に資していない」という理不尽な理由で、全額廃止という憂き目にあってしまった。
そのため、それまで毎年実施してきた年2人の留学希望生を日本に招聘し、盲学校入学前の6ヶ月間の予備研修(舟橋記念会館に泊まり込みでの生活訓練、日本語・日本点字および白杖歩行の訓練)が実施できなくなり、現状では2年に1人ないし2人、期間は3~4ヶ月と量的な低下だけではなく、以前は専任の講師による日本語・日本点字のブラッシュアップ研修だったものが、ボランティア講師へと質的な低下も余儀なくされてしまっている。
尚、19年秋には、帰国して自立・社会参加を果すだけではなく、各国で視覚障害者の権利の拡充、福祉の向上のために頑張っている9ヶ国・地域から元留学生12名を招聘、日本で勉学中の留学生8名、日本在住の元留学生6名とともに「白い杖の留学生国際大会」を開催し、マッサージ研修会、相互の情報交換・親睦・交流のためのイベントを実施しした。
そうした活動の継続を受けて、24年1月には国際交流基金の地球市民賞を受賞、同賞受賞を機に、難民を助ける会(AAR)でのアピール、NHKラジオ深夜便「明日へのことば」、NHKラジオ第2「視覚障害ナビラジオ」への出演、月刊「視覚障害」5月号での特集記事、そして本「楽平家オンラインサロン」での報告と、従来とは違った形での発信ができるようになってきた。
《これまでの実績》
19ヶ国・地域から89名の視覚障害留学生(全盲又は強度の弱視)を招聘。
帰国留学生の多くは自力でマッサージクリニックを開設したり、治療院に勤務。中には、母校や送り出し機関のマッサージ指導員や盲学校の校長、盲人協会(視覚障害者協会)の会長に就任し、後進の指導に当たっている元留学生もいる。また、視覚障害者としての自身の経験に鑑み、幼児教育の必要性を痛感、幼児教育のための団体を立ち上げ、奮闘しているケースもみられる。
また、日本留学で体験・体感した日本の福祉制度や日本社会の福祉のありようなどをSNSなども活用し、帰国後、母国に還元している。
《問題ないし課題》
現在は、視覚障害留学生の勉学先は、三療学習の場合は筑波大学附属視覚特別支援学校(筑波盲学校)、情報システムは筑波技術大学にほぼ限定されてしまっているが、以前は、各自治体立の視覚特別支援学校の多く(26校)が受け入れてくれてきた実績がある。
日本の三療の国家資格は母国での通用性がなく、また実技試験もないため、せっかくの免許がお飾りでしかなく、また実技のブラッシュアップのための指導機関が不在にひとしい。
その他、排外主義的なバッシング、日本との教育格差(留年)、国家間格差(ラオスなど)
石渡博明のプロフィール
(財)海外技術者研修協会(現・海外人材育成協会:AOTS)元職員(1970~2008)
―アジア・アフリカ・ラテンアメリカからの技術研修生(合弁先・技術提携先・代理店職員)の来日研修の支援、世話
日本語教育担当(日本語講師、教材作成、教科書作成)
日本紹介プログラムのコースコーディネーター(講師・見学先・通訳手配/国内小旅行添乗員)
管理研修コースコーディネーター
対研修生招聘企業宛て国庫補助金支給審査基礎資料作成
(社福)国際視覚障害者援護協会(IAVI)の名ばかり理事、ボランティアスタッフ(1980頃~2010)
ボランティア理事長(第4代理事長:2010~現在)br>
何でも屋 理事長としての役割(予算・決算理事会の開催・運営)
留学生の選考・来日に伴う書類作成、入管・病院引率等、盲学校行事への出席、仲介、空港への出迎え・見送り
舟橋記念会館の運営・維持、宿直員の手配、時に自ら泊まり込み、おさんどん、日本語教育、日本紹介等々。
(裏の顔)
江戸期の医師・思想家である安藤昌益(1703~1762)の在野の研究者。「安藤昌益の会」事務局長。
農文協版『安藤昌益全集』編集・執筆委員の一人。著書『安藤昌益の世界』『昌益研究かけある記』『安藤昌益再発見』ほか。