WHOの推計では、ミャンマーには人口の15%にあたる900万人以上の障害者がいると言われている。世界のリハビリテーション医療(以下、「リハビリ医療」と略す)は、現在、主としてPT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)などの専門職種によって行われているが、ミャンマーでは専門職種としてPTしか大学で養成されていない。従って、病院でのリハビリ医療は医師とPTによってのみ営まれている。私はJICAのシニア・ボランティアとして、2016年5月から2年間にわたりヤンゴン総合病院の「物理療法とリハビリテーション科」(いわゆるリハビリ科)に赴任し、そこのPTにOT訓練の実際を教えつつ、勤務時間外は「真の」ボランティアとして訪問リハビリやモバイル・クリニックに積極的に参加し、多くの障害者に関わってきた。その経験を踏まえ、ミャンマーで行われているリハビリ医療の現実と、その問題点や課題を、日本人のOTの視点から報告する。あわせて、クーデター後のリハビリ医療の展望と可能性をヤンゴンの現状を通して模索する。
梅﨑利通
1950年、神奈川県生まれ。詩人、作業療法士(OT)。OT歴43年。
1973年8月、当時の南ベトナム・ビンズオン省の難民村(ビン・ホア村)で行われたワークキャンプに参加(東京YMCA主催)。難民村の子どもたちのために遊園地を造る。1975年1~3月、解放直前の南ベトナム各地の孤児院や難民村を訪れながら国内を旅し、特にホイアンの町で、尊敬すべき人々によって運営されている孤児院に巡り合い、しばらく滞在する。3月8日には陥落直前のバン・メ・トゥオトを飛行機にて脱出。同12月、解放直後のラオスのビエンチャンを訪れる。1977年4月、ハノイ経由で解放2周年を迎えた旧サイゴン市を再訪。
1981年から定年までの30年間、国立療養所箱根病院(小田原市)勤務。筋ジストロフィーや難病のリハビリ医療に関わる。2006年と2008年、さらに2010年から2016年までの7年間の、年末から次の年の正月にかけての1週間、ミャンマーの無医村で医療ボランティア活動(横浜YMCA主催)。2016年~2018年、JICAシニアボランティアとして、ヤンゴン総合病院リハビリ科で働く。クーデター後も、2023年1月、6月、10月、2024年3月、ヤンゴンを訪れ、ヤンゴン総合病院でボランティア活動をしながら、訪問リハビリに奮闘。
現在、神奈川県南足柄市在住。今もOTとして、就学前の子どもの通園施設で(元気に)働いている。自転車での訪問リハビリも週1回継続中。休耕田を借りて、無農薬でお米作り歴20年以上。機械を使わず、手で田植えをしている。
《主な著書一覧》