掛け軸、襖、屏風、巻物など、紙や絹に描かれた日本の伝統的絵画とは構造上密接な関係があるのが表装技術です。それは、絵画を鑑賞可能な状態に仕立てることであり、保管や保全に優れた形態に仕立てるのです。絵画が主役であり、主役を引き立て支え、先祖がやってきた事をが後の時代に残すのが、表具師の役目です。
ところで、豊臣秀吉に重用された、長谷川等伯という天才絵師がいます。彼の「猿侯図」、「松竹図」が、とある個人宅から見つかり、京都造形大学(現校名、京都芸術大学)が購入しました。2015年4月20日には、明治学院大学の山下裕二教授の鑑定を受けて長谷川等伯によるものと発表されました。そして、長谷川等伯の生誕の地である石川県七尾市の「石川県七尾美術館」と共に一年間かけて修復が行われました。今回お話しされる物部泰典さんは、この修復プロジェクトに表具師として関わったのです。
この作品について、400年経っても墨の色が艶っぽく劣化が少ないのは高級墨を使っていた、墨を知り尽くしている、また、発色、定着にしっかり考えた技が光っていると京都芸術大学では分析しています。画家の素材に対する技術、知識はもちろん、400年受け継がれて来たものを、さらに400年いやそれ以上の未来に残していくためには、裏方である卓越した表具師の技が必要と考えられます。
「伝統工芸士」と認定されている物部さんは、京都で明治34年に開業し、4代にわたる「物部画仙堂」の表具師として、「京表具」の伝統技術を継承してきています。
以上は、当日のサロンで、司会進行を担当する栗原佳美からの紹介です。
なお、長谷川等伯については、以下の、2023年12月27日放映のテレビ番組「天下人が愛した美 ~北川景子が迫る名宝の秘密〜」で紹介されます。
https://www.bs4.jp/kyoto-tenkabito/
物部泰典(ものべやすのり)
「京表具」伝統工芸士
京都造形芸術大学講師
有限会社 物部画仙堂 (代表取締役)
(協)京都表装協会 会員
京都で明治34年に開業し、4代に渡り表具師として伝統技術を継承。2007年度 [京表具」伝統工芸士に認定される。
ひとこと:自分が表具師になれたのは曾祖父・祖父・父と受け継いでくれた為と感謝しております。又この仕事を通じ敬愛する日本国の伝統文化継承発展の為尽くしたいと考えております。
2018年「伝統的工芸品産業功労者等経済産業大臣表彰」奨励賞受賞。
2019年2015年には長谷川等伯の新発見となる屏風の修理新調を手がける。
様々な大学で教鞭を執り、京表具の見知から後進育成に当たる。