第38回
『楽平家オンラインサロン』
「写真が伝える仏教壁画」
井上隆雄写真資料に基づいた
アーカイブの実践研究
2023年10月11日(水)
20:00〜
バガン遺跡 ウェチーイン・クービャウチー寺院で取材する井上隆雄
「井上隆雄写真デジタルライブラリ(20462)」
転載ご遠慮ください。

話の内容とプロフィール


《内容》


写真家・井上隆雄(1940-2016)は、1973年に写真家として独立し、ラダックやビルマを来訪し、仏教壁画や現地の様子を多数撮影して記録しました。京都芸大芸術資源研究センターでは、逝去後に残されたポジフィルムをはじめ数多くの関連資料のアーカイブに取り組んでおります。本発表では、井上隆雄さんの紹介、写真資料のアーカイブ活動・デジタルデータベースの紹介、芸術資源の活用として写真からの仏教壁画表現の再現について紹介します。


■写真家・井上隆雄について

1940年に滋賀県大津市に生まれ、1965年に京都市立芸術大学(当時は京都市立美術大学)の工芸科を卒業、1973年より写真家として独立した。2016年7月21日 76歳で亡くなるまで、精力的に撮影取材、出版、執筆など精力的に発表した。


卒業後、早川電機(現シャープ)に就職し、いわゆる企業戦士として充実した日々を送るが、その無理が重なり結核を患い、一年以上の入院・療養生活を送る。この闘病が転機となり、1973年に写真家として独立、メラネシア、ラダック、ビルマ、モンゴルと海外へと撮影取材を重ねる。1978年(38歳)で、「バガンの仏教壁画」「チベット密教壁画」を立て続けに出版し、大きな反響を得る。40歳ごろから、茶道、日本の寺社、日本の風景等を対象にした撮影が活動の軸になる。哲学者 梅原猛の著書「日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る」の写真を担当、その後も京都を題材とした「京都発見」「壬生狂言」など二人の協働は続く。さらに、親鸞聖人の足跡を三度辿った取材による「おのずから しからしむ」「光のくにへ」の出版と展示、日本の自然や風景の撮影を自らのライフワークとし、「すすき」「群青海」等の写真集出版を多数行った。自然の中で忘我の境地を得る「自然法爾」を実践し、「自然(じねん)」という思想に至る。71歳、大病を患い、車椅子生活となりフィールドワークが難しくなるが、下鴨神社 糺の森の撮影を続け「光と游ぶ」を刊行、最後の写真集となった。


自ら企画撮影し、展示、出版を精力的に行い、新聞等への寄稿も多数ある。写真の企画展示として「土に咲く 障害者施設から 美のメッセージ」、個展「禅-Meditation」(Cast Iron Gallery New York)など、招待展示として「京都美術文化賞受賞作家展」「梅原猛と33人のアーティスト展」他多数。


受賞は1984年「京都市芸術新人賞」、2000年に「日本写真学会賞(東陽賞)」、2004年に「京都市文化功労者表彰」、2011年「滋賀県文化賞」他多数。


井上隆雄写真資料について

井上隆雄のアトリエには膨大な数のポジ・ネガ・プリント・機材・作品、そして多数の出版物や蔵書が残されました。 これらの写真資料は、出版物ごと、クライアントごと、季節や地域ごと等、井上隆雄とアシスタントによって丁寧に箱やファイルに選り分けられていました。 撮影対象は、仏教美術、アジア諸民族の文化、国内外の自然の風景、京都の文化、他の美術作家の作品や展覧会の記録、様々な分野にわたっています。


井上隆雄写真資料の紹介

  • 井上隆雄写真作品 367点
  • 井上隆雄所蔵作品 61点
  • 写真資料収納箱 490点(写真用収納BOXやダンボールの点数。一箱のフィルム収納枚数は未確認)
  • 資料類 15点(収納BOX、ダンボール含む 主に取材ノート、メモ等の封書)
  • 蔵書 501点

主なカテゴリー紹介

  • 仏教美術・アジア諸民族の生活
    国内の寺社の建築、仏像または祭事に関する記録。海外ではインド壁画、ラダック、モンゴル、ビルマなどの寺院、壁画、遺跡の様子、またそこでの人々の生活の様子などの記録があります。
  • 国内の風景
    出版物『みちのく風土記』(1984年)、『美しき無常 すすきの気色』(2012年)があるように、井上氏は自然の草木を中心に様々な地域を訪れて撮影しています。月ごとに分類した箱の中に膨大な数の風景写真のポジが保管されています。
  • 海外の風景・文化
    ギリシャやトルコなどにも取材に行き、アテネやポセイドン、トロイやディディマなど、古代遺跡や彫像、街並みなどを撮影しています。
  • 京都の文化
    梅原猛『京都発見』シリーズや茶道を伝える雑誌『淡交』の撮影を担っていたということもありますが、茶道や祭礼、下鴨神社や葵祭、深泥池や寺社など、京都の様々な景色や文化に関わる写真があります。
  • 美術関連
    井上隆雄さんは今熊野時代の京都市立芸術大学の様子を記録しています。(写真集『描き歌い伝えて』(1980年))その他にも、知人の個展や記録冊子、図版製作のために様々な作家を撮影した写真資料が残っています。
    1970年に開催された「第10回日本国際美術展(通称、東京ビエンナーレ)-人間と物質」の京都市美術館会場を撮影したネガフィルムも確認できました。地下の彫塑室を梱包したクリストの展示風景やクラウス・リンケが京都市美術館のエントランスでのパフォーマンスを行っている様子を確認することができます。

◆井上隆雄のビルマ(ミャンマー)で撮影の写真は、いずれも大野徹の解説による、以下の書籍に収められています。

  • 大野徹・井上隆雄『パガンの仏教壁画』 講談社、1978年
  • 大野徹編著『ビルマの仏塔』 講談社、1980年

◆国立民族学博物館の「写真家・井上隆雄の視座を継ぐ ー仏教壁画デジタルライブラリと芸術実践ー」のシンポジウムにおいて、ビルマならびにインド・ラダックでの活動が紹介されました。
写真家・井上隆雄の視座を継ぐ ー仏教壁画デジタルライブラリと芸術実践ー | 京都市立芸術大学 (kcua.ac.jp)


《プロフィール》


正垣雅子

京都市立芸術大学/大学院 日本画専攻 准教授


京都市立芸術大学/大学院日本画専攻修了、同大学博士課程保存修復専攻満期退学。日本および東洋絵画の模写を通じて、表現研究を行っています。アジアの絵画表現や技法は、日本に継承されている表現技法との共通す流転が数多くあります。私は、シルクロードの石窟寺院やチベット仏教文化圏の寺院壁画調査に基づき、絵画表現を解釈し、再現する模写を専門にしています。模写は、作画の追体験と表現の再現を試みる面白さがあります。


2018年から、本学卒業生である井上隆雄さんの写真資料のアーカイブに関わることになり、デジタルライブラリの構築と芸術資料としての活用を試行しています。

ZoomあるいはTeamsによるオンラインミーティングです。

※なお、京町家の再生をプロデュースした栗原佳美が、「楽平家」のスポットを紹介する「町家の秘密」が含まれています。
参加方法はこちら ➡
申し込み先:
mgx2chou@gmail.com


申込み期日:
10月9日(月)

開催日時:
10月11日(水)20:00~
参加をご希望の方は、①名前 ②メールアドレス ③電話番号(任意) ④「会合を知ったきっかけ」 ⑤「会合に参加の動機」または「参加にあたってのメッセージ」を 記載の上、mgx2chou@gmail.com宛にお送りください。

参加にあたっては、パソコンにカメラとマイクの機能が備わってい ること(外付けも可)が必要です。パソコンからは、送付する「 Zoom (あるいはTeams)のリンク」のURL(httpsではじま る部分)をクリックしていただければ参加できます。

スマホ、タブレットの場合は、あらかじめ、「Zoom(あるいは Teams) のアプリ」をダウンロードしておく必要があります。

アプリがインストールされていれば、上記のリンクをクリックすれ ば、自動的にアプリが起動して参加いただけます。

ミーティングID,パスコードの入力は、必要ありません。

参加申し込みは、必ず参加者ご本人がしてください。

なお、①名前は、通称などでの参加も可能ですが、その場合(本名: )として本名を必ず入れてください。
本名が不明の場合、参加できません。
( )のママは、名前の読みなど、その一部として、下記の「参加者名簿」に記載します。
また、これまで、「オンラインサロン」に参加された方で、メールアドレスに変更のない場合は、②に直近に参加された月(あるいは第〇回)を記入いただければ、以後の項目は省略して結構です。
ただ、⑤に、「参加にあたってのメッセージ」を記載いただければ、下記の「参加者名簿」を通して、話し手の方々や参加者と共有します。

締め切りは、10月9日(月)です。
ちなみに、参加費は不要です。

その後、担当の田村克己から「招待リンク」をお送りします。
申し込み受付けの返事は原則として致しませんので、当日11日 の 13:00までに「招待リンク」の届かない場合、上記の「申し込み先」 に、早急にご連絡ください。

また、事前に、配布資料(ある場合)、ならびに、可能であれば、①名前と ⑤「会合に参加の動機」あるいは「参加にあたってのメッセージ」 記載の「参加者名簿」を送付いたします。

原則としてどなたでも参加できますが、人数の関係などの事情により、参加をお断りすることがあります。

なお、いただきました個人情報につきましては、責任をもって慎重 に取り扱いますので、その旨ご了解ください。
Laphetye
Made on
Tilda